評価:★★★ 3
有栖川有栖のデビュー作。巻末のあとがきを読むと、どうやらデビューまでに色々とあったようで、その経緯もちょっと面白い。そしてこの人はミステリが好きなんだとよくわかる。
内容は冒頭から急展開。殺人事件の起こったキャンプ場付近の山が噴火。逃げ惑う一行、果たして!? というところで、物語はキャンプ場に着くところへ逆戻り。そこから始まります。
クローズド・サークルものなんだけれど、不思議な館や不気味な山荘が出てくるわけでもなく、舞台はキャンプ場。屋外です。もちろん密室のようなものは存在しないし、ちまちましたトリックがあるわけでもない。
エラリー・クイーン的な、犯人になり得たのは誰か? なぜ彼が犯人足り得たか? を緻密に追求するミステリです。思わず、なるほど、と思ってしまうようなタイプの謎解きなのですが、しかし強引な解釈だったり、言い逃れしようと思えばできなくはないんじゃないかな、と感じるようなところもしばしば。本家クイーンだってそうなんだからまあいいじゃないか、と言えばそれまでですが。
あと、本格ミステリには珍しくロマンス要素があります。わお。しかし、ラストシーンで恋愛の結末に対するさりげない伏線が素敵です。登場人物の有栖川有栖くんをはじめ、多くの人がミスリードされたことでしょう。