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絶叫城殺人事件 / 有栖川有栖

 評価:★★★ 3

 ミステリといえばやっぱり怪しげな館がでてこなくちゃ、と言うわけで、六つの奇妙な館で起こる事件を火村と有栖のコンビが解決していくというお話です。

 奇妙な館、とは言っても、嵐やなんかでそこに閉じ込められて怪しげな主人がいて美少女がいて密室で……みたいないかにもミステリな展開はないです。というか有栖川有栖ってあんまりそういう作品を書かないイメージがあります(綾辻と違って)。有栖川有栖の書く館でのクローズトサークル作品も読んでみたいんですけど、本作はいつも通りの有栖川っぽい作品となっています。

 いつもいつも古典的な本格ものという作風で、めちゃくちゃ吃驚するような衝撃的な結末なんかは無いんですが本当にアイデアが豊富だとつくづく感心します。今回もバラエティに富んだ内容で、どの事件も「館」がキーワードになっているんですが、それ以外は導入から展開からトリックから何もかもがバラバラです。ほんと引き出しが多いです。せっかく館が舞台なんだから一つくらいはクローズドサークルものを入れてくれてもよかったんじゃないかな、と思いましたけど、あえてそれをせずにタイプの違う六つの事件を用意しちゃうところが、なんていうか凄いです。
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46番目の密室 / 有栖川有栖

 評価:★★★☆ 3.5

 有栖川有栖らしい非常に誠実なミステリでした。トリック自体は奇をてらい過ぎない納得のできるもの。ただこれだけで長編とするのは無理があるかな、という感じでした。ただそれに、被害者(推理作家)が自ら考案した未発表の密室トリックで殺されたのでは? という謎を絡めることによって、シンプルな構造の推理小説にアクセントを加えています。すごく魅力的な展開で、こういったメインのトリックとは別の謎を絡めて物語を盛り上げるというのはすごく好みなんですが、逆に考えればこれだけ魅力的な設定で膨らんでしまった期待にきちんと答えるだけのトリックがメインでも用いられていなければいけないわけです。その点ではちょっと、あまりにもシンプル過ぎた気がしないでもない、かも。いつも通りといえばいつも通りで、別に悪くはないんですけど。

 本作で語られた「天上の推理小説」が面白かった。「マジックミラー」ではアリバイトリックの深みに迫った作者ですが、近作ではミステリの醍醐味である密室に焦点をあてています。「マジックミラー」でのアリバイ講義ほど濃いものではないですが、密室に対する作者の考えに触れることができてとても興味深かったです。


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双頭の悪魔 / 有栖川有栖

 評価:★★★★ 4

 有栖川有栖の代表作は? と聞かれた時にこの作品を挙げる人は多いと思います。かなり長い作品ですが、その分量に見合うだけの密度の濃い謎が用意されています。ちょっと分厚いんですけど、それも当然、川を挟んで「アリス側」と「江神側」で別々の事件が起こってしまいます。そして二つの村を繋ぐ橋は、お約束の通り、やっぱり落ちてしまってアリス達と江神部長達は分断されてしまいます。お互いにもう片方の村でも事件が起こっていることを知らないまま、それぞれが真相を探るために推理を展開していくという、なんていうかここまで聞いただけで興奮してしまうような展開です。

 それぞれの事件は単独でみるとやっぱり有栖川有栖らしいシンプルな事件です。ただ読者は二つの事件が並行して起こっていることを知って読み進めていくわけですから、登場人物達よりも遥かに多くの情報を手にしているわけです。でも全然真相が分からない。なんとかして江神部長にアリス達の状況、情報を伝えたい! そして早く解決してくれ! なんて思いながら読んでました。そういったもどかしさはありますが、最後にはやっぱり緻密な論理によって犯人を割り出してくれます。

 これだけ長い作品にも関わらず次々に新たな展開があって最初から最後まで緊張感をもたせていて、すごく面白く読めました。有栖川有栖らしさが詰め込まれた作品で、やっぱり多くの人が代表作に挙げるだけあるなあ、と思いました。

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孤島パズル / 有栖川有栖

 評価:★★☆ 2.5

 有栖川有栖の本格パズラー。学生アリスシリーズの第二弾。

 有栖川有栖は最近、火村・アリスコンビのものしか読んでいなかったので、久しぶりの学生アリスシリーズということになります。個人的には火村より江上さんの方が好きかもしれないです。

 さて、内容ですが、奇妙な形をした孤島に隠された宝と、それを巡って起こる連続殺人、という感じです。宝の在り処を示すパズルに関しては、そこまで驚くようなものではなかったかな、と。
 さて、メインの殺人に関してですが、パズル的要素に満ちた謎解き、という感じで、こちらも衝撃度はあまり高くなかったです。

 有栖川有栖は新本格というよりも、古典的本格路線の作家なんだなあ、と。エラリー・クイーン的な要素は他の作家よりもこの人がダントツ。新本格の流れで読むと、少し地味な作家だな、と思う人もいるかもしれません。

 ラストのちょっぴりほろ苦い展開も、僕は好きです。こういうの、いいと思います。

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マジックミラー / 有栖川有栖


 評価:★★★★ 4

 有栖川有栖さんの作品は他の新本格作家さん達と比べるとちょっとなあ……と思っていたのですが、このマジックミラーと孤島パズルを読んでその評価が変わりました。いやあ、凄い! 意外な犯人、時刻表を駆使した精緻なアリバイトリックに一捻り加え、そしてもう一つ、これぞ新本格!なアリバイトリック。密度たっぷりの一冊です。

 作中での「アリバイ講義」など講釈的なものは嫌いな方もいるかもしれませんが、個人的には楽しめました。アリバイトリックの分類だけでなく、アリバイトリックそのものに対する考え方、ミステリに対する作者の考えなども伝わってきて興味深かったです。

 そしてやはり、意外な犯人。トリックも凝ったものを二つも使っているし、本当に力を入れて書いた作品なんだなあ、と思います。うん、江上さんも火村も出てこないけれど、現時点での有栖川ベストかも。
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スウェーデン館の謎 / 有栖川有栖

 評価:★★☆ 2.5

 有栖川有栖と火村英生のコンビが活躍する国名シリーズの第二弾。そして初の長編でもあります。前作、ロシア紅茶の謎は個人的にしっくりこない謎解きが多かったので、長編ならきっと!と本格を期待して読みました。

 ロシア紅茶よりは面白かった!けれど、なんだかスケールが小さいような気がしてしまって、ちょっと残念。なぜだろう、面白くないわけじゃないし、トリックもある程度はしっかりしているのに。やっぱりインパクトが少し足りないのかな、と。どんでん返しとかがあるわけでもなく、大技がないだけに小さい粗に目がいってしまう。うーん。

 火村が来ることになったのも、なんだかこじつけっぽくて不自然かも。火村と有栖のキャラクターはある程度立っていると思うけど、その他の登場人物が記号的なイメージがあって、少し読み辛いかな、と。

 というわけで、今回も次作に期待することにします。


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ロシア紅茶の謎 / 有栖川有栖


 評価:★★ 2

 有栖川有栖と火村英生のコンビが事件を解決する国名シリーズ第一弾。これは短編集となっており、その中の一つにロシア紅茶の謎、というクイーンの国名シリーズに倣ったものがあります。

 感想としては後期クイーンの影響かどうか、ダイイングメッセージものが多いように感じました。三つかな。そしてそのどれもが分かるわけねえよー、的なもの(だったよう)に思えたので、読後感はなんとなくしっくり来ず……。

 一番良かったのは表題作のロシア紅茶の謎。それと八角形の罠もなかなか。他の作品もこれくらいの出来なら良作だったのに。ダイイングメッセージものがあまり好きではないのは認めるけれど、特に受け付けなかったな〜本作のは。
 
 
 
 学生アリスシリーズを先に読もうかなあ。
 

Author: mine
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月光ゲーム―Yの悲劇’88 / 有栖川有栖


 評価:★★★ 3

 有栖川有栖のデビュー作。巻末のあとがきを読むと、どうやらデビューまでに色々とあったようで、その経緯もちょっと面白い。そしてこの人はミステリが好きなんだとよくわかる。

 内容は冒頭から急展開。殺人事件の起こったキャンプ場付近の山が噴火。逃げ惑う一行、果たして!? というところで、物語はキャンプ場に着くところへ逆戻り。そこから始まります。
 クローズド・サークルものなんだけれど、不思議な館や不気味な山荘が出てくるわけでもなく、舞台はキャンプ場。屋外です。もちろん密室のようなものは存在しないし、ちまちましたトリックがあるわけでもない。
 エラリー・クイーン的な、犯人になり得たのは誰か? なぜ彼が犯人足り得たか? を緻密に追求するミステリです。思わず、なるほど、と思ってしまうようなタイプの謎解きなのですが、しかし強引な解釈だったり、言い逃れしようと思えばできなくはないんじゃないかな、と感じるようなところもしばしば。本家クイーンだってそうなんだからまあいいじゃないか、と言えばそれまでですが。

 あと、本格ミステリには珍しくロマンス要素があります。わお。しかし、ラストシーンで恋愛の結末に対するさりげない伏線が素敵です。登場人物の有栖川有栖くんをはじめ、多くの人がミスリードされたことでしょう。

Author: mine
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